USCPAのライセンス取得先としてワシントン州を考えている方に、先にお伝えします。
ワシントン州の教育要件が、2025年11月20日から変わりました。ライセンス取得のルートが3つになり、学士号と実務2年があれば、150単位を積まなくてもライセンスが取れるようになっています。
日本の大学を出た方の総単位は、多くの場合124〜130単位程度です。これまでは追加で20〜30単位を積む必要がありましたが、その必要がないルートができたということになります。
【前提】ワシントン州は「受験する州」ではなく「ライセンスを取る州」
最初にここを分けておきます。
- 受験する州…試験を受けるために出願する州。アラスカ州やニューヨーク州が選ばれます
- ライセンスを取る州…合格後にライセンスを申請する州。ワシントン州はここの定番です
受験した州と同じ州でライセンスを取る必要はありません。「アラスカ州で受験して、ワシントン州でライセンス」という組み合わせが、日本人受験者の定番ルートになっています。
この記事はライセンス側の話です。受験州の選び方はUSCPA受験州の選び方にまとめています。
何が変わったのか:ルートが3つになりました
2025年11月20日以降、ワシントン州のライセンス要件は次の3択です。教育要件と実務経験がセットになっています。
| ルート | 学歴 | 実務経験 |
|---|---|---|
| Option A | 学士号+会計専攻相当 | 2年(24ヶ月かつ4,000時間以上) |
| Option B | 修士号以上+会計専攻相当 | 1年(12ヶ月かつ2,000時間以上) |
| Option C (2035年12月31日で終了) | 学士号+会計専攻相当+30単位追加 | 1年(12ヶ月かつ2,000時間以上) |
Option Cが、従来の「150単位ルート」に相当します。学士号(おおむね120単位)に30単位足して150単位、というかたちです。これは残りますが、2035年12月31日で終了することが決まっています。
新しく加わったのがOption Aです。追加の30単位の代わりに、実務経験を1年増やす。単位を買い足す代わりに、時間で払うという考え方です。
「会計専攻相当」とは何か
どのルートでも「accounting concentration or equivalent(会計専攻相当)」が必要です。中身はこう定義されています。
- 会計科目 24セメスターアワー(36クォーターアワー)
- ビジネス関連科目 24セメスターアワー(36クォーターアワー)
- 学部レベルでも大学院レベルでもよい
- 会計単位が余った分は、ビジネス単位に充当できる
最後の一行は地味に効きます。会計を多めに取った場合、その超過分がビジネス側にまわせるからです。
日本の非会計系学部を出た方は、ここが不足します。予備校の提携大学などで会計・ビジネス単位を取るのは、この24+24を埋めるためです。単位取得の全体像はUSCPA単位取得の方法と費用にまとめています。
なぜ日本在住者にワシントン州が選ばれるのか
ここが本題かもしれません。ワシントン州の実務経験要件は、日本にいる人でも満たせる可能性がある設計になっています。
州のルールを整理すると、こうです。
- 監査法人でなくてよい。事業会社、政府機関、場合によっては大学での勤務も対象になります
- 複数の勤務先を合算できる
- フルタイムとパートタイムの組み合わせでもよい
- 報酬の有無を問わない(with or without compensation と明記されています)
- 申請が受理される日からさかのぼって8年以内の経験であること
対象となる業務も幅広く、取引の会計処理、予算策定、データ分析、内部監査、税務当局への報告書作成、コントローラー業務、財務分析、業務監査などが挙げられています。日本の事業会社の経理・財務にいれば、業務内容としては該当しうるということです。
比較として、ニューヨーク州は本人と監督者が同じ組織に所属していることを要求します。日本の会社に米国CPAの上司がいないと詰みます。ワシントン州にはこの縛りがありません。ここが決定的な差です。
証明してくれるCPAには条件があります
実務経験は「Experience Affidavit(実務経験証明書)」に、米国CPAの署名をもらって提出します。署名する人には条件があります。
- 署名の時点で有効な米国CPAライセンスを保持していること(ワシントン州でも他州でもよい)
- ライセンス保持歴が5年以上あること(連続していなくてよい)
証明する側にも作業があります。申請者の職務経歴を確認し、面談などを通じて業務内容を把握し、州が定める6つのコンピテンシーを経験する機会があったかを判断する。そしてその判断根拠を3年間保管する——ここまでが署名者の役割です。
申請者側も、根拠となる資料を3年間保管する義務があります。「知り合いに軽くサインしてもらう」という性質のものではない、と考えておいてください。
なお署名してくれるCPAを自分で見つけられるかが、実務上いちばんの関門です。予備校によってはこの部分の支援を用意している場合があるので、ライセンスまで取るつもりなら、入会前に確認しておくといいと思います。
学歴評価はNIESで受けます
日本の大学を出た方は、ワシントン州の教育要件を満たすかどうかをNIES(NASBAの国際学歴評価サービス)に評価してもらう必要があります。州のページに明記されています。対象は次のとおりです。
- 米国外の大学で取得した学歴
- 認定を受けていない米国の大学で取得した学歴
注意点が1つあります。すでに別の州向けにNIESの評価を受けている場合は、「Change in Jurisdiction Evaluation(管轄変更評価)」を申請する必要があります。アラスカ州で受験してワシントン州でライセンス、というルートを取る方は、この手続きが発生します。
ここは州によって扱いが逆になるところです。ニューヨーク州は、ライセンス審査でNIESの評価を受け付けません。同じNIESでも、州によって使える/使えないが分かれます。詳しくはUSCPA学歴評価(NIES)の手順と費用にまとめました。
いま準備している人が確認すべきこと
3点あります。
① 自分がどのOptionを狙うのか決める
学士号だけなら Option A(実務2年)、追加30単位を取るなら Option C(実務1年)。単位を積む費用と、実務1年ぶんの時間を天秤にかけることになります。すでに経理・財務の実務が長い方なら、Option Aのほうが早い可能性があります。
② 会計24単位+ビジネス24単位を満たせているか確認する
どのOptionでも共通の要件です。ここが足りないと、そもそもスタートラインに立てません。
③ 署名してくれる米国CPAのあてがあるか考えておく
ライセンスまで取るなら、遅かれ早かれ必要になります。合格してから探し始めると時間がかかります。
この記事の限界
正直に書いておきます。筆者はワシントン州のライセンスを取得していません。この記事はワシントン州会計士委員会(Washington State Board of Accountancy)の公式ページを読んで整理したものです。体験談ではありません。
また、州の規則は改正されます。とくに2025年から2026年にかけて、全米の多くの州が同様の制度変更を進めている時期です。申請前には必ずご自身で州の公式ページを確認してください。出典を下に載せています。
まとめ
- ワシントン州の教育要件が2025年11月20日から変わった
- ライセンス取得ルートが3択に。Option A なら学士号+実務2年で、150単位は不要
- 従来の150単位ルート(Option C)は残るが、2035年12月31日で終了
- どのルートでも会計24単位+ビジネス24単位が必要
- 実務経験は監査法人でなくてよく、報酬の有無も問われない。複数の勤務先を合算できる
- ニューヨーク州と違い、監督者と同じ組織に所属している必要がない。ここが日本在住者に選ばれる理由
- 署名するCPAはライセンス保持歴5年以上が必要
- 日本の大学の学歴はNIESの評価を受ける
よくある質問(FAQ)
Q. ワシントン州の要件はいつ変わりましたか?
A. 2025年11月20日です。この日から、CPA試験の受験資格とライセンス取得の教育要件が新しいルール(WAC 4-30-060)に切り替わりました。
Q. 150単位がなくてもライセンスは取れますか?
A. Option A なら取れます。学士号と会計専攻相当(会計24単位+ビジネス24単位)があれば、追加の30単位は不要です。ただし実務経験が2年(24ヶ月かつ4,000時間以上)必要になります。
Q. 従来の150単位ルートはなくなりますか?
A. Option Cとして残りますが、2035年12月31日で終了することが決まっています。こちらは実務経験が1年で済みます。
Q. 日本の会社での経理経験は実務経験として認められますか?
A. ワシントン州は監査法人以外での経験も対象としており、事業会社や政府機関での勤務が挙げられています。業務内容としては会計処理、予算策定、データ分析、内部監査、財務分析などが該当します。ただし最終的な判断は署名する米国CPAと州が行うため、個別のケースは州にご確認ください。
Q. 実務経験を証明してくれるCPAの条件は?
A. 署名時点で有効な米国CPAライセンスを保持していること(州は問いません)、かつライセンス保持歴が5年以上あることが必要です。5年は連続していなくても構いません。
Q. ニューヨーク州とワシントン州、実務要件はどう違いますか?
A. ニューヨーク州は本人と監督者が同じ組織に所属していることを求めますが、ワシントン州にはこの要件がありません。またワシントン州は報酬の有無を問わず、複数の勤務先を合算できます。日本在住者にワシントン州が選ばれるのは、この違いが理由です。
Q. アラスカ州で受験しました。ワシントン州でライセンスを取る場合、学歴評価はやり直しですか?
A. NIESに「Change in Jurisdiction Evaluation(管轄変更評価)」を申請する必要があります。ゼロからのやり直しではありませんが、追加の手続きが発生します。
出典
- Education Requirements(ワシントン州会計士委員会)(2026年8月14日確認)
- Experience(ワシントン州会計士委員会)(2026年8月14日確認)
- Alternative Pathways to CPA Licensure Adopted in Washington(ワシントン州公認会計士協会)
