ニューヨーク州で出願する予定の方、あるいは出願州を検討中の方に、先に結論をお伝えします。
ニューヨーク州の受験要件が、2027年8月1日から変わります。これまで会計4分野で足りていた必修科目が、会計5分野+ビジネス5分野の計10分野になります。ニューヨーク州教育局の公式ページに記載があります。
アラスカ州やグアムで出願する方には関係のない話です。ただしニューヨーク州は日本人受験者の出願先として名前が挙がることが多く、すでに手続きを進めている方は間に合うかどうかの確認が必要です。
【前提】「受験する州」と「ライセンスを取る州」は別の話です
この記事を読むうえで、最初にここを分けておいてください。混同すると話がまったく噛み合わなくなります。
- 受験要件(120-to-sit)…その州で試験を受けるための条件。日本人がニューヨーク州を選ぶのは、ほぼこちらの目的です
- ライセンス要件(150単位+実務経験)…その州でCPAライセンスを取得するための条件。受験した州と同じ州で取る必要はありません
この記事の本題は受験要件のほうです。日本在住のまま、ニューヨーク州でライセンスまで取得する人は多くありません。
理由は実務経験の条件にあります。ニューヨーク州でライセンスを取るには、米国CPAの監督下で1年の実務経験が必要で、しかも本人と監督者が同じ組織に所属していることが求められます。外部の契約者やコンサルタント、役員といった関係では認められません。日本の事業会社に勤めていて、この条件を満たせる人は限られます。
そのためライセンス要件の変更は、後半に参考情報としてまとめました。受験目的で読んでいる方は、そこは読み飛ばしていただいて構いません。
いつから変わるのか
2027年8月1日です。
ニューヨーク州教育局のページには、この日を境に「Prior to August 1, 2027」と「On or after August 1, 2027」で要件が並記されています。同じ日付で、150単位パスウェイも従来型から「CPA Evolution Model」に切り替わります。
あわせて、従来の120単位パスウェイ(2009年以前の要件で認められていた経過措置)も2027年8月1日に廃止されます。これは古い経過措置のほうで、後述する2026年11月施行の新しい120単位ルートとは別物です。混同しやすいので注意してください。
【本題】受験要件(120-to-sit)はこう変わる
USCPAには「120単位あれば受験だけはできる」というルールがあります。ニューヨーク州ではこれを120-to-sit Ruleと呼んでいます。ここの必修科目が増えます。
2027年7月31日まで
120単位に加えて、以下の会計4分野それぞれで1科目以上。
- financial accounting and reporting(財務会計)
- cost or management accounting(原価計算・管理会計)
- taxation(税務)
- auditing(監査)
2027年8月1日から
120単位に加えて、会計5分野とビジネス5分野、合計10分野それぞれで1科目以上が必要になります。
会計(5分野)
- financial accounting and reporting(財務会計)
- cost or managerial accounting(原価計算・管理会計)
- taxation(税務)
- auditing(監査)
- accounting information system(会計情報システム)← 新規
ビジネス(5分野)
- information systems and technology(情報システム・技術)← 新規
- business law(ビジネス法)← 新規
- business data analytics(ビジネスデータ分析)← 新規
- economics(経済学)← 新規
- finance(ファイナンス)← 新規
これまでビジネス分野には必修指定がありませんでした。2027年8月以降は5分野すべてで1科目ずつ必要になります。実質的に6分野が新たに必修化される計算です。
いま手続きを進めている人はどうすればいいか
受験資格(120-to-sit)について、期限に関する具体的な案内は公式に出ていません。
過去に他州で要件変更があった際の扱いを踏まえると、変更期日までに受験資格が認められていれば旧要件で受験できると考えるのが安全です。ただしこれは確約された取り扱いではありません。ニューヨーク州で出願予定の方は、早めに手続きを進めておくことをおすすめします。
学歴評価には数週間から2ヶ月ほどかかります。そこから受験資格審査、出願、NTS取得と続くので、逆算するとあまり余裕はありません。手順はUSCPA学歴評価(NIES)の手順と費用にまとめています。
予備校で取った単位で足りるのか
ここが一番気になるところだと思います。結論から言うと、この記事では判断できません。
予備校の提携大学で取得できる科目は各校で異なり、また随時見直されています。ニューヨーク州で出願する予定の方は、必ず在籍中の予備校(または検討中の予備校)に直接確認してください。「2027年8月以降のニューヨーク州の必修10分野を、御校の提携大学で全部カバーできますか」と聞くのが確実です。
特にビジネス側の5分野は、これまで必修ではなかったぶん、提供科目が揃っていない可能性があります。
ニューヨーク州で受験するなら、学歴評価にも注意点があります
NIES(NASBAの国際学歴評価サービス)の評価は、ニューヨーク州では受験資格の審査にしか使えません。州教育局は、外国教育について外部の評価サービスを受け入れないとしており、NIESもその対象に挙げられています。
受験目的であればNIESで問題ありません。影響が出るのは、ニューヨーク州でライセンスまで取ろうとした場合だけです。その場合は大学から州教育局へ直接、書類を送り直すことになります。
【参考】ライセンス要件も同時に変わります
ここからは、ニューヨーク州でライセンスまで取得する場合の話です。前述のとおり、日本在住のままこの道を選ぶ人は多くないので、参考としてお読みください。
2026年11月から「120単位+実務2年」のルートが加わります
ここは報道と公式サイトの記述が食い違って見えるところなので、先に整理しておきます。
2025年11月21日、ニューヨーク州で新しい州法(A7613B)が成立しました。これによりライセンス取得のルートが2つ並ぶことになります。
- 150単位+実務1年+試験合格(従来からのルート。廃止されません)
- 120単位+実務2年+試験合格(新ルート)
ただし施行は2026年11月21日です。成立から1年の移行期間が置かれており、2026年8月時点ではまだ有効になっていません。
そして重要なのが、120単位で具体的にどの科目が必要かは、まだ確定していないことです。法律の条文は「州の規則で定める科目要件を満たすこと」と書いてあるだけで、州教育局からの移行ガイダンスも出ていません。
そのため、州教育局のサイトにはこの新ルートがまだ反映されていません。公式ページには150単位パスウェイの話しか出てこないのに、ニュース記事では「120単位でライセンスが取れるようになった」と書かれている。この食い違いの理由がこれです。
日本から受験する方にとっては、そもそもライセンス取得州としてニューヨーク州を選ぶ人が少ないので、実害の小さい話です。ただ情報が錯綜しているので、古い記事や要約だけを見て判断しないほうがいいとは言えます。
150単位パスウェイがCPA Evolution Modelへ
主な変更点は3つです。
- 会計33単位のうち、18単位はupper-level(3〜4年次または大学院レベル)であることが明示された
- 会計の必修が4分野から5分野に(accounting information systemsが追加)
- ビジネス36単位についても、5分野で各1科目が必修化
会計側の選択分野には、新たにaccounting ethics(会計倫理)とaccounting data analytics(会計データ分析)が加わりました。
学位そのものに条件がある
州教育局のページには、次の記載があります。
ライセンスに必要なのは会計(またはそれと同等)の学士または修士である。学士号なら学位プログラム内に会計24単位、修士号なら21単位を含む必要がある。他分野の学士号に、非正規生として取得した会計単位を足したものは認められない。
日本人受験者に多い「会計以外の学部を出たあと、予備校の提携大学で会計単位を追加する」という進み方は、ここに引っかかる可能性があります。
くり返しますが、これはライセンスの話であって、受験の話ではありません。受験目的でニューヨーク州を選ぶぶんには関係ありません。ライセンスまで取りたい方は、ライセンス取得州を別に検討するか、州教育局に直接確認してください。
そのほかの規定
- 各分野につき3セメスターアワー以上の科目が1つ必要(単位数の下限がある)
- 会計コア5分野のうち4つはupper-levelで取る必要がある。財務会計、税務、監査、会計情報システムの4つ。原価計算・管理会計はどのレベルでもよい
- USCPAの試験対策講座は会計33単位に算入できない。Becker、Wiley CPAExcelなどが名指しで挙げられている。ビジネス単位や総単位には算入可
- 試験合格による単位認定やクレジットバンクの成績証明書は認められない
- 会計情報システムの科目は、QuickBooksなど特定ソフトに限定された内容だとコア要件を満たさない
従来要件でライセンスを取るなら期限がある
州教育局は、従来型の150単位パスウェイについてこう書いています。
2027年8月1日までに、教育・試験・実務のすべてを含むライセンス手続きを完了する必要がある。審査を確実に間に合わせるため、ライセンス関連の書類は2027年5月1日までに提出すべきである。
「試験に合格していれば大丈夫」ではなく、実務要件まで含めた手続き全体の完了が条件です。
この記事の限界
正直にお伝えしておきます。筆者はアラスカ州で出願したため、ニューヨーク州の手続きは経験していません。この記事はニューヨーク州教育局の公式ページと、州法の報道をもとに整理したものです。
また、制度は変わります。とくにニューヨーク州はいま移行期の真っ最中で、公式サイトの記述が追いついていない部分があります。出願前には必ずご自身で最新情報を確認してください。下に出典のリンクを載せています。
まとめ
- ニューヨーク州の受験要件が2027年8月1日から変わる
- 必修が会計4分野 → 会計5分野+ビジネス5分野に
- 新たに必修化されるのは会計情報システム、情報システム・技術、ビジネス法、ビジネスデータ分析、経済学、ファイナンスの6分野
- 受験資格の経過措置について公式の案内はない。早めに手続きを進めるのが安全
- 予備校の単位で足りるかは各校に直接確認を
- ライセンス要件も変わるが、これは別の話。日本在住のままニューヨーク州でライセンスまで取る人は多くない
- ライセンス側は2026年11月21日から「120単位+実務2年」のルートが加わる。ただし科目の細目は未確定
アラスカ州・グアムを検討中の方には影響しませんが、出願州を決める判断材料にはなります。
よくある質問(FAQ)
Q. ニューヨーク州の受験要件はいつ変わりますか?
A. 2027年8月1日です。ニューヨーク州教育局のページで、この日を境に旧要件と新要件が並記されています。
Q. 何の科目が新しく必要になりますか?
A. 会計側でaccounting information system(会計情報システム)が1つ追加されます。ビジネス側は、information systems and technology、business law、business data analytics、economics、financeの5分野が新たに必修になります。合計6分野の追加です。
Q. 受験要件とライセンス要件は何が違いますか?
A. 受験要件はその州で試験を受けるための条件、ライセンス要件はその州でCPAライセンスを取得するための条件です。受験した州と同じ州でライセンスを取る必要はありません。日本人がニューヨーク州を選ぶのは、主に受験目的です。
Q. 日本にいながらニューヨーク州のライセンスは取れますか?
A. 制度上は不可能ではありませんが、条件が厳しいです。米国CPAの監督下で1年の実務経験が必要で、しかも本人と監督者が同じ組織に所属している必要があります。外部の契約者やコンサルタントとの関係では認められません。
Q. 「120単位でライセンスが取れるようになった」と読みました。本当ですか?
A. 2025年11月21日に州法A7613Bが成立し、「120単位+実務2年+試験合格」のルートが加わります。ただし施行は2026年11月21日で、2026年8月時点ではまだ有効になっていません。また、どの科目が必要かの細目は未確定です。州教育局のサイトにも未反映のため、記事によって書いてあることが違う状態になっています。
Q. すでに試験に合格しています。影響はありますか?
A. 受験については影響ありません。ニューヨーク州は4科目すべてに合格した時点で試験のクレジットが失効しません。ニューヨーク州で従来要件のままライセンスを取る場合のみ、2027年8月1日までに手続き全体を完了する必要があります。
Q. アラスカ州やグアムにも同じ変更がありますか?
A. これはニューヨーク州の規定で、他州には適用されません。ただし各州は独自に規則を改正するため、出願先の最新情報はご自身で確認してください。
Q. 予備校で取った単位で新要件を満たせますか?
A. 予備校の提携大学で提供される科目は各校で異なり、随時変わります。ニューヨーク州で出願予定の方は予備校に直接ご確認ください。
出典
- Initial License for Certified Public Accountants(ニューヨーク州教育局)(2026年8月14日確認)
- CPA Evolution – 150-hour Education Requirement(ニューヨーク州教育局)(2026年8月14日確認)
- NY Governor Hochul signs CPA licensing bill(CFO Dive、2025年11月21日)
- NY won’t immediately flip the CPA licensing switch.(CFO Dive、2025年11月25日)
